「I'M FLASH!」子宮にして墓穴なる海【65点】
藤原竜也と「青い春」「ナインソウルズ」の豊田利晃監督が初タッグを組み、宗教団体の若きカリスマ教祖が直面する衝撃的な運命を描いた人間ドラマ。新興宗教団体「ライフイズビューティフル」を率いる教祖・吉野ルイは、ふとしたことから謎の美女・流美と出会う。しかし、ルイが引き起こした交通事故によって流美は植物状態になってしまい、教団の幹部であるルイの母や姉は事故のもみ消しを計る。3人のボディガードとともに南海の孤島に避難したルイは、教団の陰謀を暴く重大な決断を下すことになる。ボディガードの1人で、ルイの存在にひかれながらも対峙することになる新野風を、藤原とは初共演となる松田龍平が演じる。
※映画.comより引用
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
映画「I'm flash!」観ました。
同名の楽曲にインスパイアされたヒューマンドラマ。藤原達也演じるカルト宗教団体の教祖と彼を警護するヤクザ者たち、そしてカルト宗教を信仰していたが自殺してしまった妹を持つ美女。彼らが「生と死」について問い続ける物語。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
ルイ(藤原達也)は教団のトップとして「死とは究極の救いであり、死を恐れる必要はない。死そうとも魂はあり続ける」と説くも、彼自身はその思想を否定している。
ルイは「なぜ生きるのか」を問い続け、悩み苦しむあまり刹那的な快楽に逃避する生活を送る。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
そんなルイの趣味の一つがダイビング漁。銛を手に海へと深く潜り、魚を捕獲しては食べている。
「海」は作中で繰り返し登場する重要なスポットだ。
「I'm Flash!」において"海"が象徴するもの
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
この映画における海は「浮上する」「潜る」という二つのアプローチを通して「生」と「死」という二重のイメージを仮託されている。
それぞれ「海から浮上する」ことは「生」、「海へと潜る」ことは「死」のイメージだ。本作の海は生まれいづる場所であり、死してたどり着く場所でもある。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
ルイはダイビングを繰り返す。
それは彼が「生」と「死」に対して真摯に向き合っているから。「潜る」ことで彼は仮初の死に沈み、「浮上する」ことで生き返る。
ルイはダイビングを通じて「死してたどり着く場所」と「生まれ出づる場所」を行き来し、彼なりに生と死へ向き合っている。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
またダイビングを通じて生と死を往復するその姿は、生きるべきか死ぬべきか、その瀬戸際で悩み続ける彼の心を象徴している。
松田龍平演じる新野に「殺してくれよ」とうそぶくも、自殺は選ばない。そんなルイの揺れる心情を代弁しているのが繰り返されるダイビングだ。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
終盤、新野に撃たれたルイの屍は海へと沈む(死)。だがそれと同時に植物状態だった美女の意識が覚醒する(生)。
波が寄せることもあれば返すこともあるように、海は死して沈む場所であり、同時に生まれてくる場所でもある。「生」と「死」という対極の要素をこの映画の海は孕む。
ルイの決断、そして「flash(輝き)」
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
結局のところ、ルイは生きることを選んだ。
ルイは教団にて説いた「死は究極の救い(ライフイズビューティフル)」に乾杯しようとしたヒットマンを撃った。「そんなもんねぇよ」というセリフこそが彼の本音、死が救いではないからこそ彼は悩み続け、死ではなく生を選び立ち向かったのだ。
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
「ストレスなく死んだ魚は美味しい、人間も苦しまずに逝けば天国にいける」と冗談めかして語っていたルイは、生と死の象徴である海を行き来し続けたルイは、最期に生きようとした。
新野の銃撃に彼は銛で立ち向かい、そして撃ち殺された。苦しんでも生きようとした、それこそがルイの決断。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
ここでタイトル「I'm flash!」が活きてくる。
「死ぬまでの生をまぶしく輝いて生きる」という思想、それは死を救いとみなして諦める態度ではなく、最期まで生きようとしたルイの諦めない姿に表されている。
悩み苦しみながらも生を選び殺されたルイは、間違いなく輝いていた。
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
輝きは見たものの目に残像を焼き付ける。
新野と組んでいるヒットマン・吉村もまたルイの輝きに焼かれた一人。ラストシーンで「天国の若いの(ヒットマン)と一杯やってくる」と語った彼は、生と死に悩み続けたルイの姿に影響され、彼なりのやり方で生と死について向き合い始めた。
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月26日
ルイを撃ち殺した張本人・新野の目にルイの輝きはどう映ったのだろうか。
「あいつ神様を信じたくなりやがった」と吉村を笑った彼だが、彼もまた輝きに目を焼かれているはずだ。だからこそルイが海岸に砂でつくった髑髏を、銃弾でつくったのだから。
「メメント」嘘嘘嘘嘘……【70点】
強盗犯に襲われて妻を失い、頭部を損傷し、約10分間しか記憶を保てない前向性健忘という記憶障害になったレナード。彼は、ポラロイド写真にメモを書き、体中にタトゥーを彫って記憶を繋ぎ止めながら、犯人を追う。実在するこの障害を持つ男を主人公に、時間を遡りながら出来事を描くという大胆な構成が話題を呼び、全米でインディペンデントでは異例のヒットを記録。監督は本作が第2作の新鋭、クリストファー・ノーラン。
※映画.comより引用
個人的満足度:70点
※ここからネタバレ感想
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
「メメント」観終わりました。
複雑な映画を撮ることで有名なノーラン監督の、複雑な映画。
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
記憶障害で物事を新しく記憶できない主人公・レナードが覚えているのは「自分は保険の調査員だった」「サミーという記憶障害の男の保険請求を切り捨てた」「妻が強姦され殺された」こと。
レナードは犯人に復讐するため、メモや入れ墨に情報を記録しながら探偵のように事件を調査していた。
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
レナードは胡散臭い男テディ、恋人を喪った経験を持つナタリーの協力を得て犯人を突き止める。
憎き犯人ジョン・ギメルはテディだった。レナードはテディを射殺し、復讐を終える……が、しかし。テディは最後に「俺じゃない、工場の地下を見れば真実がわかる」と言い残す。
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
この「テディの射殺」は物語冒頭で描かれたシーンにして、時系列順ではラストシーンにあたる。
映画はここからビデオテープのように巻き戻され、レナードがテディを射殺するまでの経緯、そしてレナードがテディこそ犯人ジョン・ギメルだと考えた理由が掘り下げられる。
※ここから時系列順にあらすじを整理しています
@tos
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
レナードは保険調査員時代、サミーという記憶障害の男の保険請求を審査した。
だがレナードはより優秀な調査員として実績をあげるためにサミーを記憶障害を騙る詐欺師として切り捨てる。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
サミーを切り捨てた後、家に二人組の強盗が押し入り、レナードの妻に暴行をくわえる。
レナードは強盗犯の一人を射殺するが、頭を殴られて気絶。後遺症として記憶障害をわずらってしまう。
この時、妻は死亡していない。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
記憶障害となったレナードと妻の生活が始まるが、妻はレナードの記憶障害が嘘なのではないかと疑う。
そこで妻はレナードにインシュリン注射を繰り返し頼み、彼の障害が本当かどうかを確かめようとした。
結果、本当に記憶障害だったレナードは複数回のインシュリン注射で妻を死なせてしまう。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
妻を死なせたショックから、レナードは記憶の改ざんを行った。
「妻をインシュリン注射で死なせたのは記憶障害のサミーで、自分の妻は強盗犯に殺された」と思い込むことで、「自分は妻を殺していない」と罪悪感から逃れ、「妻を殺した強盗犯に復讐する」という生きる目的を手に入れる。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
レナードの体に彫られた入れ墨、そのなかで一番目につくものが左手首の「サミーを忘れるな」。
これは「インシュリン注射で妻を死なせたサミー(という虚像)を忘れるな」という意味であり、自分の過ちから目を背けるための暗示でもあった。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
レナードはテディと出会い、強盗犯ジョン・ギメルを殺害する。
これで復讐は終わったはずだが、そうなるとレナードは生きる目的を失ってしまう。そこで彼は復讐の完遂をわざと記録せず、記憶障害を利用して忘れ去ることにした。
復讐を終えたはずのレナードはそのことを忘れ、次の復讐を始める。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
テディはレナードに「次のジョン・ギメル」を与えて殺させ、死んだ連中から金を吸い上げるビジネスを始める。
テディはレナードに多くの「ジョン・ギメル」を殺させ、私腹を肥やす。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
そしてテディはナタリーの恋人にして麻薬バイヤーであるジミーに目をつける。
テディはいつも通りレナードに嘘を吹きこみ、ジミーこそジョン・ギメルであると思い込ませて殺させる。
だがジミーは殺される前にテディの名前を出し、レナードはテディに騙されていることを知ってしまう。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
レナードがテディを問い詰めると、テディは真実を暴露。すでに本当のジョン・ギメルは死んでおり、復讐が終わっていることを伝える。
だがレナードは真相を記録せず、さらなる逃避を決意。テディの車のナンバーを復讐相手のものと偽って記録。テディを次のジョン・ギメルとして殺すことにする。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
そしてまた記憶を失ったレナードは、ジミーの車と服を奪って行動を開始。ジミーの恋人だったナタリーに拾われる。
ナタリーはレナードを利用し、ジミーが持っていた薬を追うバイヤーのドッド、そしてジミーの仇であるテディの二人を消そうと画策。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
ナタリーはレナードに「自分は協力者である」と信じ込ませ、彼女を守るためレナードはドッドを街から放逐する。
それからナタリーはジョン・ギメル探しに協力。テディこそジョン・ギメルだと彼をそそのかす。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
過去の自分からの嘘(車のナンバー)、そしてナタリーの情報提供に踊らされ、レナードはテディこそジョン・ギメルだと思いこみ殺害する。
テディを殺した場所はジミーを殺した工場。その地下にはジミーの死体がある。テディが言い残した「真実」とはジミーの死体のことだった。
※総括
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
メメントは嘘の物語。
テディ、ナタリーはレナードを利用するために騙し、モーテルのオーナーはレナードの記憶障害を利用して部屋を2重に貸し、そして過去のレナードもまた自分自身に嘘の記録を残していた。
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月24日
……と、いうところまでは理解できたのですが、ぶっちゃけ筋書きを理解するのにいっぱいいっぱいで解釈をこねる余裕がありませんでした。
面白かったけどついていくのに必死だった……。
「ステイク・ランド 戦いの旅路」男たちの築く"杭の王国"【75点】
バンパイアがはびこる世界を舞台に、安住の地を求めて旅を続ける人々の姿を描き、トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で最高賞を受賞したサバイバルホラー。バンパイアの蔓延によって都市が壊滅し、秩序が崩壊した世界。バンパイアに両親を殺されてしまった少年マーティンは、ミスターと呼ばれるバンパイアハンターの男に救われる。ミスターと一緒に行動することになったマーティンは、バンパイアが存在しないという北の聖域ニューエデンを目指して旅に出る。「ネズミゾンビ」の監督ジム・ミックルと主演ニック・ダミチが再タッグを組み、共同で脚本も手がけた。
※映画.comより引用
個人的満足度:75点
※ここからネタバレあり感想
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— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
「ステイク・ランド 戦いの旅路」観ました。
ゾンビ系ヴァンパイアが跋扈する荒廃したアメリカを舞台に、"ミスター"と呼ばれるナイスガイと、彼に師事する少年"マーティン"の旅路を描くホラー・アクション。
約90分と短めながら内容は濃密。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
旅の中での出会いと別れ、そしてヴァンパイアとの戦いをテンポ良く描き視聴者を飽きさせない。
銃だけでなく杭やナイフ、弓など原始的な武器を駆使した泥臭いヴァンパイア・ハントシーンは血の匂いを感じられるほど生々しい。
ミスターは素性こそ語られないものの、その眼差しは強く優しい。彼はマーティンに荒廃した世界での生き残り方を教え、マーティンを一人前の大人へと鍛え上げていく。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
「過去は今の役に立たない」と彼は説くが、その思想はマーティンの中で「未来は過去より明るい」といった形で息づく。
二人は道中で老いたシスター、若い娘(ベル)、軍人の男を拾い疑似家族をつくる。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
マーティンはベルに好意を抱くが、彼女はすでに妊娠していた。故にベルはマーティンの恋人とはならず、マーティンは空き家で見つけたエロティックなトランプを代替品として持ち歩く。
だが結局シスター、軍人、そしてベルは旅の途中でヴァンパイアに殺され、マーティンとミスターはまた二人きりになる。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
そこで出てくるのが喫茶店の娘ペギーだ。彼女は若く美しく、そして妊娠しているわけでもない。マーティンとペギーは自然に惹かれ合うこととなる。
マーティンはペギーのため、死してなお彼女につきまとっていた元同級生のヴァンパイアを殺害する。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
その様子を陰から見届けたミスターは静かに去り、マーティンはペギーを連れてニューエデンへと向かうことになる……という〆。
これはマーティンの成長物語だ。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
ヴァンパイアによって家族を喪ったマーティンは、ミスターという父、シスターという母、軍人という友人、そしてベルという憧れの異性、そしてペギーという恋人と出会った。
だが友人と母と憧れの異性は死に、父は姿を消す。疑似家族たちの死と失踪はマーティンの独り立ちを意味する。彼が独り立ちできる人間になったからこそ、物語から家族、そして自分の恋人ではない異性が消えた。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
マーティンの成長を確信したからこそ、ミスターは自ら姿を消したのだ。
「ステイク・ランド(杭の国)」というタイトル。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
これは杭で戦わねばならない荒れ果てたアメリカ、人里を示すべく打たれた看板、そしてミスターやマーティンが杭で切り開いた旅路を意味する。
杭で切り開いた旅路、それは戦いの旅路で築いた疑似家族。寝泊まりする車を国土とした彼らの王国(ランド)。
— 秋野クレ@映画感想 (@october31_2400) 2017年11月22日
マーティンはミスターから扱いを習った杭を握り、家族を率いる父として、一人の男としてステイク・ランドを導く立場へと成長したのだ。